日々の小さな徒然を書き留めています。

のめりこむ危うさ

 
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リビングで寛ぐお年寄りの話題は、家族の事と日々の天気。

それからお互いの年齢を尋ね合うのも頻繁だ。

昭和一桁世代は、年齢の話題は盛り上がる。

「おたく何年生まれですか?わたしは昭和3年です」

同じ話の繰り返しは今に始まったことではなくて、

それだけで一日が終わりそうになるぐらい延々と続く。

そんな話をしているのを傍で聞いていると、ほほえましくもあり切なくもなり・・・

だからこそ重ねてきた年月は、誰にとっても偉大であるものだと思わずにはいられない。

 

昨晩の夜勤は、頻回にコールは鳴っていたが、特にトラブルもなく平穏に過ぎた。

それだけでもほんとにありがたい。。

 

他人だから話せる本音もあるというもので、人生の四方山話に心揺さぶられたりも多々ある。

昨夜もそんな日だった。

 

家族から省みられず淋しい思いをしている男性の方。

持病があるために常に付き添いと見守りが必要だ。

幻覚症状ありで認知がゆるやかに進んでいると記録に残っていた。

 

眠前薬を部屋まで持って行き、他愛もない話が始まった。

さらには、妻が隣に寝ていると・・・

幻覚か。

夜間になると不穏が見られるお年よりは少なくない。

慎重に言葉を選びながら話を聴いた。

 

「嫁はんはなわしが声をかけてもすっと行ってしまう」

「追いかけるが追いつけない」

「あの世に行ってからも時々顔を見に来てくれるんやと思ったらいつも夢ですわ」

「えっ?」

「奥さん生きてますよね」

「死んだ妻って、もしかして再婚ですか?」

 

アセスメントには記載されていない情報だった。

 

「そうや」

「23の時に心臓の病気で死んでもうて、今の嫁はんと5年後に再婚したんや」

 

夢の話をしていたのを幻覚症状だと記録に残されてはたまったものではない。

話の中に時系列がばらばらになっているのはよくあるが、全てが幻覚であるわけではない。

そんなんならわたしなんか始終幻覚だらけと言われてしまう。

ベテランさんは、ちゃんと話を聴いているのだろうか。

現場への不信感がまた湧いた。

 

「今は上手くいってないんよ」

「いくつになっても忘れられん」

「忘れられんだけや」

「それが今の嫁には気にいらんのよな・・・やきもちやな」

「女はいくつになっても恨みよる。あれはあれで可哀想でな」

「近ければ近い程情の絡みは難しいものやで」

 

そうか。

 

「他人さんの方がこうやって話し聴いてくれるしな」

「皆帰りたい帰りたいやけど、わしはここにいると落ちつくから楽やけど、

やっぱり淋しいのは一緒やで」

 

話は1時間以上に及んだ。

 

 

気持ちが重かった。

ひとひとりの人生という膨大な時間に押しつぶされそうになった。

他人だからいいというものではない。

寄り添う気持ちの限度をわたしはすぐに見失ってしまう。

介護士としては失格だと言われないまでも「甘い」となるのだろう。

 

そんな介護の現場をわたしは自分の都合で去る。

 

 

 

 

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