夜桜

   

ひと月ぶりに夫の実家に行った。
 
玄関前の主のいなくなった鉢花たちは、一応に荒れていたが、
良く見ればさくらそうは花開き、百合の芽吹きを確認できた。
わずかばかりの雨粒で生き延びていたようだ。
 
百合の鉢は素焼きの一番大きな鉢だった。
あれもこれも持って帰ろうと考えていたが、とても片手間に持って帰れる重さではなかった。
今回は大事な用事もあって諦めた。
 
 
朝の早い時間に、少しだけでもと枯れたものは整理し、
雑草を取り除き水をたっぷりとやった。
しかし、この陽気だ。
思った以上に気温も高い。
またすぐに水を欲しがるであろう鉢花を不憫に思った。
 
実は、この家にはわたしの3人の娘のうちのひとりが住んでいる。
娘はここから仕事に通っている。
義母亡き後、空き家にするには忍びなくて思案していた時に、娘が手をあげてくれたのだ。
 
水ぐらいかけてよと思わなくはない。
 
しかし、家の周囲をぐるりと囲むように置かれた大量の鉢。
ガレージにも棚を置き所狭しと鉢、鉢・・・
 
その数200個に及ぶ。
これには娘が、
「お母さん、無理、わたしに期待しないで」
と早々に根をあげた。
 
そりゃそうだろう。期間限定ならともかく延々と面倒見てよとは言えなかった。
 
朝が早かったり、夜が遅かったり。
フルで働いていれば、たとえ数個の鉢植えの水遣りだって結構大変だ。
夏場の暑い時期は、うっかりするとすぐに干上がってしまうものだ。
ましてや、ガーデニングに興味がなければなおさらだ。
 
そこで無職のわたしが思い立った。
よし、連れて帰ろう。
できるだけ多く。
うちで面倒見よう。
 
 
頻繁に通えばできそうではないか。
働きありのごとく、大きくて重い鉢はひとつ。
プラの軽いものなら2,3個は大丈夫かもしれない。
1週間に一回は行けば随分の量運べそうだ。
 
娘にもちょこちょこ会えるし。
運動にもなる。
夕飯でも作って置けば喜ぶかなあと、母親の下心もふつふつと湧いてきた。
 
 
 
その日、義母の納骨を終えて帰宅した。
 
夕方、缶ビールと缶チューハイを持ってお花見に出かけた。
冷蔵庫からチーズを引っ張り出して・・・
出かけたというほど大げさではないけれど。
 
すべり台1つに砂場ひとつだけの小さな公園。
たった1本桜が咲いているその場所のベンチに座った。
 
ぽっちゃりした半月が空に浮かんで、さくらの木が1本だけあって、
口にはしなかったけれど、
別れの宴のような気がした。
 
 
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