日々の小さな徒然を書き留めています。

海の近くで暮らしていました。

2017/03/18
 
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前に住んでいた所は海の近くだった。

窓を開けていれば、波の音が聞こえ日々のうねり具合を詳細に届けてくれた。

空に丸く弧を描きながら飛ぶとんびや、横一列ならびの名も知らない渡り鳥がいた。

海面にはオーケストラのようにカモメが集い、大勢の観衆カモメ達が取り巻いていた。

そんな日替わりの天然の大劇場を見ながら暮らしていた。

 

真夏の暑いさなかや真冬はごめんだが、ほどよい夕暮れ時や人恋しい時は、

わたしもその仲間に入りたくて砂浜に出た。

湿った砂浜に残る自分の足跡を振り返り、

所々波で洗われて途切れている様に、感傷的な気分になりながら何回も行ったり来たりしたものだ。

 

砂浜の石は丸い。

ころんとして可愛らしい。

手にとってみると見た目よりも結構ずっしりと重たいのに驚かされた。

軽石ではないんだ。

わが子にもじって数個の石を拾った。

 

砂浜には、角の取れたガラスの破片が宝石のように埋まっていたりする。

きらきらとして光をまっすぐに受け入れている気がして小石と一緒に拾った。

部屋に持ち帰り透明なジャムの空き瓶に入れ、

センチメンタルな気持ちで、この海の潮の香りも一緒にしまいこんでいたのだろう。

 

引越しで荷つくりをしているとそのジャムの空き瓶が出てきた。

入れていた石は処分するものの中へ、

ガラス瓶はリサイクル用にと分別して躊躇もせずに捨てたつもりだった。

「ただの石なんだから」

・・・。

 

ところが、ちらっと振り返ると石は転がされたそのままの形で、

そんなはずなどないのにじっとわたしを見上げているような気がしてきた。

捨てられないな。

もう一度石を拾い上げジャムの瓶に入れなおした。

 

ただの石なのに石以外の何者でもないのに、どうした?

ココロころころ

ココロころ・・・。

ただの石ころがアメジストかサファイアのように、いえいえそれ以上になっていった瞬間だ。

ぎゅっと蓋を閉めながら、わたしは今度はこの部屋の空気も一緒に詰め込んだ。

 

引越し作業というのは、

時に思い出をときほどき、そして結びなおすものなんだと思った。

 

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