自分の下に人を作りたがる人。

わたしが最初に勤めたのは歩いて10分ほどの近所にスーパーだった。
二ヵ月半で逃げだしたが。
今の職場も同社他店だ。
再び同じ会社を選んだ。
リベンジのつもりだった。
仕事内容のマニュアルは全て一緒、
店によって多少の違いはあっても一度聞けば把握できる自信があった。
不安なのは人間関係だった。怖くてたまらなかったのを覚えている。
実はわたし、関西に引越し一人暮らしを始めた時に最初に勤めたのがこの会社のスーパーだった。
そう3店舗目だ。
仕事だけでいえば、3店舗目の強みはやっぱりあって、
普通に教えてもらえれば先輩方に追いつくのに時間はかからなかった。
わたしと同じ時期に入社したパートさんが一人いる。
年齢も一緒だ。
スーパーの仕事は初めてだという。
50代後半になってから新しい事を覚えなければいけないのは大変そうで、
結構苦労しているのが見てとれた。
しかし、持ち前も明るさと何事も気にしないタイプの性格のようで頑張っているのが伝わってきた。
よしわたしも頑張ろうと思わせてくれる人だ。
所が最近気になることが現れた。
一年半先輩のパートさんが、彼女に何かと自分の仕事を振るのだ。
例えば、品だしで余った商品をバックに持って帰ってとかはまあまあ有りかもしれない。
しかし、自分の加工作業で出たダンボールをつぶしてと言っているのには驚いた。
片付けさせているのだ。
一応「悪いけど」とか「ごめんだけど」という言葉はつけているが、
「それってあなたの仕事じゃないの」と横目でちらりとみてそう思ったのがわたしだ。
心の中で思っただけでとても口に出してはいえない。
後で同期と二人になった時にそれとなく尋ねてみた。
「○○さんが色々と仕事押し付けているように見えるけど大丈夫なの?」
すると
「そうなんよ。でも嫌っていえないし。仕事を教えてくれる時もあるから気にしないようにしてる」
「それにすぐ忘れるからいいんよ」
すぐ忘れているようには見えなかったが、本人が気にしていないというのだからそれ以上何も言えず
「そうなんだ。変に揉めるのも嫌だしね」
で話しは終わった。
スーパーの裏方を支えているパートの世界にもこんな具合に色んな感情が絡み合っている。
自分に必要な感情と不必要な感情を上手により分け、自分の居場所を確立して行く。
人はなんと高度な技を駆使しながら生きているものだと思う。
わたしにはそれが足りない。
今度またそんな場面に遭遇したらさりげなく目配せして
「自分でしたらいいのにね」のオーラーを発信しあおう。


