想定内だ、蹴飛ばしてしまえ!

仕事を終えて自転車で帰宅した。
早出出勤だったので帰宅時間も早い。
日差しは斜めになっていたがまだまだ強かった。
お茶いりのポットを今日は忘れた。
何度も道路わきに設置されている自販機を恨めしいと思いながら通り過ぎた。
家に帰り玄関のドアを開ければ真っ先にシャワーに入る。
アイスコーヒーをつくり、氷のカランコロンという音にしばし耳を傾けた。
「夏なんだなあ」
勤める職場の壁には、塗り絵の朝顔が咲いていた。
94歳の手で塗られた朝顔ははなびらが透けて見えた。
「はみ出たらいかんと思ってゆっくり塗っているんよ」
「手本は青色だけど、ピンクがいいやろ」
そんな他愛無い会話ができるのはいい。
穏やかに過ぎる時間。
毎日がこうでであればいいのだがそうはいかないのが世の常。
わたしは50代の介護師初任者。
初めて飛び込む未知の世界。
知らないことばかりだ。
超えなければいけない山だらけなのも承知しているつもりだった。
なのに今、介護云々以前にちいさな石ころにつまずいている。
「想定内だ。蹴飛ばしてしまえ」
と頭半分でわめきながら、よろめいてしまった体制をどうやって立て直そうか。
余計な事にエネルギーを使っているこの頃だ。



