アクシデントその後

目的地に行けなかった飛行機。
台風で欠航というのは何度も経験があるけれど、オイル漏れで引き返すというパターンは初めてだった。
整備不良で、100パーセント航空会社側の責任になるという。
翌日臨時便を飛ばすことで客に了解を得、その日の空港までの交通費の負担、
欠航になってしまった事で生じる宿泊費の負担等、
合計一人当たり1万5千円を上限に出してくれるという。
1万5千円あれば空港近くのホテルに泊まり、
ちょっと美味しいものを食べて明日の臨時便に乗るという選択をする人も結構居た。
わたしはというと、翌日他空港の振り替え便を提案され承諾し家に帰った。
ホテルの宿泊込みのツアーでチケットを取っていたので、
帰りの便は変更が出来ずに島に滞在する日が一日短くなった。
それでも楽しみに待っているであろう母親を思うと日を改めるという選択は
全く眼中になかった。
空の上で旋回ばかりする飛行機にたじたじしていたことなどすっかり忘れ、
翌日は9時発の飛行機に乗る為に飛び起きた。
一度あることは二度ある。
そんな不吉な予感もなんのその。
最新型の機体にはWi-Fi装備しておりスマホで映画を観ながらの空の旅だった。
そういえば、昨日の飛行機は随分と古かったなあ。
やっぱり新しいのだと安全のような気がしてくるから現金なものだ。
飛行機を乗り継ぎ島に降り立った途端に、まとわり付くような湿った風。
わたしのふるさとは亜熱帯の気候に属する小さな島だ。
2月というのにハイビスカスが咲き、ランタナ、ビンカ等が華やかに色ついている。
それもそうだ。
その日の最高気温は20度だ。
半そでで充分過ごせる気温だ。
久しぶりに見る母の顔はとても穏やかでふっくらとしていた。
ドラマの再会の場面のように二人で手を握り合って、
元気そうで・・・と声を詰まらせた。
昨年転倒して骨折したのにそれを乗り越えた元気な姿だった。
それにしても耳が遠くなっているなんて全くなし。
普通に会話できるし・・・・
もしかしたら携帯の受話音量が小さい設定になっているのではと思ってみていたら
案の定・・・。
音量を最大に設定し直した。
一通りの近況を伝えて後は言葉少なに二人でテレビを観て、
時々、ポツリポツリと父親の思い出話をしたり・・・
特にどうというものではない時間だったけれど、
そんなどうってない時間が愛しくてたまらなかった。
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