コンビニでコーヒーを

 

ほぼ一週間ぶりに訓練を受けた前居住の町へ行った。

用事を済ませそのまますぐに帰る気にもなれず、

コンビニでコーヒーを買い、海の見える窓際の席に座った。

 

さっきまでちらちら舞うだけだった雪が激しく吹雪いてきた。

どうりで寒いわけだ。

「少しはあったまりましょう」

とバッグから文庫本を取り出し休息体制を整えた。

 

雪が積もることの滅多に無い地域だ。

だから、余計に寒く感じるのだろう。

地上にに落ちた雪はそのままふんわりと溶けて水になり、アスファルトの路面を濡らしていった。

文庫本のページを捲りつつ、雪が止むまでしばらくとどまる事にした。

 

年配の夫婦が紙コップのコーヒーとチョコケーキらしき袋のお菓子を買い求めて、

わたしの2つ向こうの席に座った。

70代後半か。あるいは80ぐらいか。

杖をついてはいたが、二人で出かけられるのだから達者なんだろう。

仲良くチョコケーキを分け合っていた。

どちらかというとおじいさんの方が色々と細かく動いていて、

コーヒーを運んだり、袋を開けたり。

それを横目で見て、夫婦で年齢を重ねるっていいなあと思った。

 

わたしの田舎の母は86歳、事故で車椅子生活になり歩けない。

父親は昨年亡くなった。

夫婦で重ねてきた時があってもいつかは、どっちかが先に逝く。

 

父は、余命を宣告されてからあっという間に亡くなったが、

母親には、

「先に逝って待っている」

とよく言っていた。

 

「人は生まれる時も一人で、死ぬ時も一人」

よく聞くフレーズだが、縁あって共に過ごす時間を得た者同士なら、

できれば、あの世で再会できたらいいなあと思う。

 

コーヒーを飲んでケーキを食べ終えたのだろう。

年配の夫婦二人が席を立った。

 

雪はいつの間にかやんでいたが、アスファルトはぐっしょりとぬれたままだった。

何の気まぐれなのか日差しが出てきた。

この風景だけをみれば、さっきまで吹雪くほどに雪が降っていたのが信じがたく

冷たい空気以外は、真夏の通り雨後のような空模様だった。

 

気がつけば、約一時間もそこに座っていたのに、

手にしていた文庫本は一向に進んでなかった。

 

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