カラスに笑われる

「フルティカ」ミディトマト

 

毎年、プランターでトマトを育てている。

昨年までは、サントリーの「本気野菜」シリーズのブランド苗を購入していた。

1株300円程のかなり高い苗であったが、育てやすいので気に入っていた。

それを今年はやめた。

自分で種まきした。

しかし、種を買ってきたわけではない。

スーパーで売っているトマトを買い、

実際に食べて、美味しいと思ったトマトの種取りから始めた。

大玉トマト、ミニトマト等何種類かを食べ比べた。

 

時は、今から遡る事4ヶ月前。

これぞと思ったトマトを薄く輪切りにして、土を入れた卵パックにぽんぽんと置き土をかぶせる。

2月なのでまだまだ気温が低くトマトの発芽温度ではない。

ワンちゃん用の電気湯たんぽを借りて、その上に卵パックを乗せて保温し発芽を待った。

一週間もすれば、見事に発芽。

2ヶ月ほど大事に育苗して、5月の始め頃プランターに定植した。

花が咲き、小さな青い実が成り、

下葉が枯れ混んだりしながらもこの子なりに元気に育ってくれた。

 

毎日少しずつ大きくなっていく様子は、何度経験しても新鮮で楽しい。

 

ある朝、その青いトマトが1個落ちていた。

水遣りの時に間違ってひっかけたのだろうか。

残念だと思った。

所が翌日は2個落ちていた。

「あれっ」

一日飛ばして別の日にはプランターを飛び出して1個・・・傷が付いていた。

子供のいたずらか。

はてまた誰かに意地悪されているのか。

いやいや・・・

そんな事をする人がいるとも思えなかった。

カラス??

 

しかし、どうして青い実ばかり落ちているのだろうかと疑問に思った。

すぐ隣の株には赤くなりかけの実が2個ついていたからだ。

 

しかし、落ちてしまったトマトよりも気持ちはもうすぐ食べられそうな実にばかり向いていた。

ほんのりと色付き始めたトマトを眺めては、

どんな味がするのかな。

F1品種がどうのこうのとあるらしいから、種取りした親トマトと同じモノが出来るとは限らないというが・・・

楽しみはふくらんでいった。

 

しかし、昨日の朝事件は起こった。

朝起きて一番にすることは、顔を洗うことでも歯を磨くことでもない。

さっさかと外に出て、マイガーデンを眺める。

雨が降ろうと槍が降ろうとそれは変わらない。

 

それなのに、

朝一番で、まだ真っ白なわたしの一日の始まりが一瞬で「がーん」となった。

あんなに楽しみにしていた一番果の赤くなりかけの2個が綺麗に消えていた。

さらには、青いまんまのトマトも2個落ちていた。

「ぎゃー」

とつい叫んでしまったようで、何事かと夫が驚いて、

「カラスだろう」と言った。

カラスか、

それだったらもっと早くに赤くなりかけの実を取るはずではなかろうか。

絶対赤いほうが美味しいに決まっているのに。

なんで、今まで青い実ばかりつついて落としていたの?

「あいつら遊ぶからな」

 

何ということだろうか。

そういえば、毎朝近くの電信柱のてっぺんから「カーカー」とよく鳴いていたっけ。

見上げればわざと何かをつついたり落としたりしてうるさかった。

カラスもわたしと一緒でトマトが赤くなるのを待っていたのだ。

それもあんな高い所から見下ろして、トマトを愛でる人間様を観察していたとは。

きっと今ごろ、まぬけな人間だと笑っているに違いない。

 

目の前には、コロンと転がった青いまんまのトマトが2個。

「しっかりしてちょうだい」

とふてくされてる。

 

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