虫食い野菜はおいしいのうそ
先日、朝出勤して青果部門のバックヤードに入った。
作業台の上に、ポリ袋に入ったある野菜が「ハイキ、虫入り」と書かれたメモと共に置かれていた。
お客さんからのクレーム商品で間違いない。
なんだ、なんだ・・・どうした?
とその日出勤のパートさん達とワイワイ話しながら、
「虫入りだって」
「捨てまーす」
と即ゴミ箱行きになった。
ここまでなら、時々あることで特に気にもしなかったけれど、
次の言葉に唖然となったから、こうして記事にしている次第だ。
あるパートさんが言った。
「だけど、虫食いの野菜って美味しいんだよね」
別のパートさんもすぐに反応して同意。
「そうそう、虫が一番美味しいは知っているから、虫が食っているほどおいしいものだし・・・」
おいおい・・・まじですか?←わたしの心の声。
仮にもこの地域では聞けばみんなが知っているスーパーの野菜担当部門のパートさんだ。
しかも、勤務何年をうたう先輩方でしょうよ。
その日は、わたしも含めて4人のパートが出勤していた。
そのうちの2人のパートさんが、そろいもそろって同じ判断を惜しげもなく披露していた。
確かに、ちまたで時々耳にする言葉だ。
しかし、それは全くの間違いである。
野菜は、健康で栄養豊かに育っていれば、虫はつかない。
もしくは虫がつきにくくなるが正解だ。
健康体の野菜は、野菜自身が虫が嫌がる成分を放ち虫から我が身を守っている。
ベランダや玄関先でちまちまと野菜つくりを楽しむようになって知った事実だ。
野菜が本来持っている生命力が欠けた状態にあると、病気や虫の影響を受けやすくなってしまうのだ。
そんな野菜は、当然食べても美味しくないし、変なえぐみもある。
人間に例えて見るとよくわかる。
健康体で体力のある人は、細菌やウィルスに対する免疫があり抵抗力が高い。
抵抗力が高ければ病気になりにくく、仮にかかっても治りが早い。
お年寄りや子供がかぜにかかりやすいのも抵抗力が低いからだ。
無農薬だから虫食いがある。
だから安全で美味しいという判断は間違いであると声を大にして言いたい。
細かく言えば、窒素分の多い肥料のやりすぎや天候など色んな要素が絡んでくるので
虫のつかない野菜つくりは奥が深く、熟練の技が必要になってくるので簡単ではない。
そのため、虫食いのまま市場に出てしまうケースも決して少なくない。
今の時期、白菜なんかも生産者によってはアブラムシだらけのものもある。
わたしはそんなものはカットしながらどんどんゴミ箱行きにしてしまう。
野菜を購入する際、ちょっとぐらいの虫食いは許容範囲かもしれないが、
くれぐれも虫食いだらけの野菜に手を出さないように。
害虫防除が上手く行われていない事や、質の悪い土で育てられている証拠とみて間違いない。
と、長々と書いてしまったが、ここからが本題。
わたしは、同僚パートさんに、
「虫食い野菜は実はまずいんだよ」
という正しい情報を伝えられただろうか。
否である。
言えなかった。
すぐさま開店準備でそれぞれの持ち場に行くので、
そんなうんちくを垂れている暇がなかったのは事実だが、
「え~それ違うよ」
とあからさまに先輩方の意見を否定する度胸がなかった。
仲良くしているつもりでも、まだまだ表面だけの付き合いであるのがよくわかった。
今の職場を辞めたくない。
正しい情報でも伝える人によっては余計な事になりかねない。
信頼関係の厚さ次第では、よかれと思って伝えても悪意に取られてしまう。
それはこれまでも他のパートさんどうしの絡みで確信している。
あんなこんなの小さな愚痴はよく耳に入ってくるからだ。
あの人の言う事なら信頼できるというまでにならないと人は動いてはくれない。
今は、一緒に仕事をして対等の立場を確立しつつある段階だ。
先輩にあれこれ言える日がくるとも思えないが。